【レビュー】 「薔薇だって書けるよ」 売野機子

薔薇だって書けるよ―売野機子作品集

薔薇だって書けるよ―売野機子作品集

とっても素敵な短編集。
今まではどのようにご活躍されていたかは存じ上げないのですが、おそらく商業誌からは初単行本。
にも関わらずこのクオリティ。素晴らしいっす。
今出ているBE・LOVEに載っている短編も素敵だった。しかし、この人の話はうっかり話すとネタばれになりそうで下手なことは言えないところがまたかなしくもあり、楽しみでもあり。もっといろんなところで書いてほしいな。



まず何がいいって、装丁が超絶かわゆい。
本自体に写真の鮮やかな薔薇が印刷されていて、それが薄紙の表紙からきれいに透けるようになっている。
もうジャケ買い間違いなしってくらい。



内容もとてもいい。
ぐぐってみたら、大島弓子と並んで名前が出てくることが多いみたいだ。語り口、モノローグはたしかに大島弓子に似たところがあるが、まったく別物な気がするんだけど。
風変りな女の子との新婚生活。タイムスリップ。同級生がずっと好き。
そんなお話がいくつもつまっている。
特に表題作はいい。最後まで読んだときににやにやしながら膝を打つことだろう。ああ、薔薇だって書けるよってそういうことかって。



しかし、登場するのはまたもやふわふわ茶髪女子。私のコンプレックスはどうやらよっぽど根深いらしい。あなおそろしや。



「俺、大人になっちまったからわかるのさ
まったく色んなことを忘れちまうよ」
「『10年置きに何もない時代だった』と誰かが言う
やわい手のひら 廻ぐる命
あたしたちは傷つきながら繁殖していく」