[レビュー]かわいい結婚

かわいい結婚

かわいい結婚

物語にはうわあああこれですよあるある!!!!と叫び出したくなるような圧倒的な共感のためにあるものと、想像力の果てを探索するみたいにこの世界に穴を開けるものがあると思っている。そう分類すると、この物語は前者だ。なんでこのひとはわたしたちの考えてることがわかるんだっていうあれです。エスパーです。今の「女子」たちが抱える、苛立ちや諦め、そしてうれしさや希望が、ない交ぜになった、どうしようもない感覚が圧倒的に、鮮明に繊細に描かれている。
前々から刹那的な、だからこそほんとに閃光のごとくこの瞬間にものすごい力で輝く物語を書かれる方だと思ってきたけれど、これもまさにそう。書いてあるブランドや感覚が古くなったっていい。今この瞬間に最大瞬間風速でわたしの中を通り抜けたのだから、それでなんかもうほんとにいい!!!!!!だいじょぶです!!!!!!って勝手に思えるような感じ。

かわいい結婚は圧倒的に家事に向いていないのに専業主婦になった地方在住女子を、悪夢じゃなかった?はある日突然体が女子になってしまったアラサー男子を、そしてはお嬢さんたち気をつけては、女子大を卒業してシンメトリーではいられなくなったふたりの女の子を描いている。どれもフェミニズムの芯が通ってる、とわたしは勝手に思った。
なんで実際の向き不向きじゃなくって、性別によってこっちの仕事が得意って思われてるんだろう。「女子」だからってなんで些細な振る舞いをいちいちジャッジされるんだろう。「女子」を維持するのにどれだけのコストと手間がかかるんだろう。選択肢がたくさんあるように見えて、なんで益々首がしまってるように感じるんだろう。

どの作品にも女子同士の関係が描かれる。惨めで妬みに絡み取られるときもある。いつでも仲良しでいられるわけじゃない。ふっと会わなくなったり、関係が再びうまくいくのに何年もかかったりするかもしれない。
でもそれでも、女の敵は女とか、マジ嘘です。いろいろな分断がわたしたちを待っているだろう。総合職一般職、未婚既婚、子持ち子無し、美人不美人。それでもいい。立っている領分が違ったって、かわいいとおいしいと悪口の潤滑油で今日もわたしたちは走り回れるはずだ。あなたの幸せを祈って、次の再会の日を待ち望めるはずなのだ。

「またね!」